地球温暖化が深刻な問題となる中、「脱炭素社会」の実現が国際的な優先課題となっています。脱炭素社会は、二酸化炭素（CO2）など温室効果ガスの排出を抑え、最終的には実質的にゼロにすることを目指す取り組みです。この目標を達成するためには、再生可能エネルギーの利用やエネルギー効率の向上が求められています。本記事では、脱炭素社会の基本的な考え方や、その実現に向けた国内外の動き、そして企業が行うべき取り組み例について詳しく解説します。

脱炭素社会とは？

脱炭素社会とは、CO2排出を抑制し、最終的に排出量を実質ゼロにすることを目指す社会のことです。特に化石燃料を燃焼することで発生するCO2が温室効果ガスとして地球温暖化の原因とされており、その排出削減が急務とされています。このような背景のもと、世界中の国々や企業が積極的に脱炭素社会の実現に向けた方針を掲げています。

脱炭素社会の最終目標は「カーボンニュートラル」です。これは、排出されるCO2と自然界や技術によって吸収されるCO2の量を釣り合わせることで、実質的にCO2の排出がゼロになる状態を指します。この概念が普及することで、企業活動や社会全体が環境に配慮したものに移行しつつあります。

国内外での脱炭素社会に向けた取り組み

海外の取り組み

アメリカ

アメリカでは、2021年にバイデン大統領が就任後、気候変動対策に大きく舵を切りました。パリ協定に復帰しただけでなく、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げています。また、2030年までに風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーの導入を強化し、発電におけるCO2排出をゼロにするための取り組みも進めています。

ヨーロッパ

ヨーロッパは、脱炭素化において非常に積極的な姿勢を示しています。特にEUは、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目指し、多くの規制や政策を導入しています。例えば、EUは「欧州グリーンディール」という政策パッケージを策定し、温室効果ガスの排出削減を経済成長と両立させることを目指しています。また、ヨーロッパ各国は再生可能エネルギーの導入を進める一方で、産業部門に対して厳しい排出規制を設けることで、持続可能な経済への移行を促しています。

中国

中国もまた、脱炭素に向けた取り組みを強化しています。中国は世界最大のCO2排出国ですが、2030年までにCO2排出量のピークを迎え、2060年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げています。この目標を達成するために、再生可能エネルギーの開発に巨額の投資を行っており、特に太陽光発電や風力発電が急速に拡大しています。

日本の取り組み

日本も、2020年に「2050年カーボンニュートラル宣言」を行い、脱炭素社会に向けた取り組みを進めています。政府は、脱炭素社会に向けた具体的な計画として「グリーン成長戦略」を策定し、再生可能エネルギーの普及やエネルギー効率の向上に向けた施策を打ち出しています。また、2030年までに温室効果ガス排出量を2013年比で46%削減することを目標にしており、この目標達成に向けたさまざまな政策が展開されています。

日本における脱炭素化の課題の一つは、化石燃料への依存度が依然として高いことです。国内のエネルギー供給の約80％が石油や石炭などの化石燃料に依存しており、これを再生可能エネルギーに置き換えるための技術開発やインフラ整備が求められています。

脱炭素に向けた企業の取り組み例

企業が脱炭素社会の実現に向けてどのような取り組みができるかは、業界や企業規模によって異なりますが、以下のような取り組みが考えられます。

1. 再生可能エネルギーの活用

再生可能エネルギーの活用は、脱炭素に向けた基本的な取り組みの一つです。企業は、自社の工場やオフィスでのエネルギー消費を再生可能エネルギーに転換することが求められています。例えば、太陽光発電パネルを設置して自家発電を行ったり、風力発電からの電力を購入することが考えられます。

このような取り組みを通じて、企業はエネルギーコストの削減や温室効果ガス排出の抑制を実現できます。また、再生可能エネルギーを活用することで、企業の環境に対する姿勢が評価され、顧客や投資家からの信頼を得ることができます。

2. 省エネルギーの推進

企業活動において、エネルギー効率の向上を図ることも重要な取り組みです。例えば、オフィスビルや工場のエネルギー消費を削減するために、LED照明の導入や断熱材の使用、エネルギー効率の高い設備への更新などが挙げられます。また、生産プロセスの見直しや自動化技術の導入により、エネルギーの無駄を削減し、より効率的な運営を実現することが可能です。

3. EV（電気自動車）の導入

社用車や配送車をEVに置き換えることで、CO2排出を大幅に削減することができます。EVはガソリン車に比べてCO2を排出しないため、企業の脱炭素化に大きく貢献します。また、再生可能エネルギーで充電を行うことで、さらに環境負荷を低減することが可能です。

一方で、EV導入に際しては初期コストが高いという課題もありますが、国や自治体からの補助金制度を活用することで、負担を軽減することができます。

4. カーボンオフセット

カーボンオフセットは、企業が自社で排出するCO2を他の場所で削減する取り組みです。例えば、植林や再生可能エネルギーのプロジェクトに投資することで、企業の排出量を相殺することができます。このような取り組みを通じて、企業は温室効果ガスの排出を抑えつつ、社会的な責任を果たすことが可能です。

5. サプライチェーン全体でのCO2削減

脱炭素化は、企業自身の取り組みだけでなく、サプライチェーン全体で実施することが求められています。原材料の調達や製造、流通の各段階でCO2の削減に取り組むことで、企業全体の環境負荷を抑えることができます。また、サプライチェーン全体での取り組みを評価する指標が導入されており、環境に配慮した企業経営が一層求められています。

まとめ

脱炭素社会の実現に向けた取り組みは、企業にとって単なる環境対策にとどまらず、経営戦略の一環としても重要です。再生可能エネルギーの活用や省エネルギーの推進、EV導入など、具体的なアクションを通じて企業価値の向上やコスト削減が期待できます。また、国際的な競争力を高め、社会的な信頼を得るためにも、持続可能な取り組みが求められています。企業は脱炭素経営を積極的に進め、持続可能な社会の実現に貢献していくことが重要です。