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タイが国立公園に捨てられたごみを送り返す

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タイ国立公園の斬新な取り組み

どの観光地でも、観光客がポイ捨てにして行くゴミの対策には頭を悩ませています。
こんな中、タイでは捨てられたゴミを送り返すという斬新な取り組みが始まり、話題を呼んでいます。
この取り組みをスタートさせたのは、タイのカオヤイ国立公園です。

カオヤイ国立公園は正式名称を「ドン・パヤーイェン・カオ・ヤイ森林群」といい、タイでは国立公園として最初に認定された公園です。
2005年7月には世界自然遺産にもドン・パヤーイェン・カオ・ヤイ森林群として登録され、「タイの軽井沢」として人気を集めています。
カオヤイというのはタイ語で「大きな山」という意味があり、総面積2,168平方キロメートル内には約95種の樹木が植えられています。

ポイ捨てに対する法律

カオヤイ国立公園に観光客が捨てていくゴミを送り返すアイディアを考えついたのは、ワラウット・シラパアーチャー天然資源・環境相です。
天然資源・環境相は、Facebookに観光客が捨てていったゴミを「ひとつ残らず集めてお土産として箱に詰め、ご自宅に送り届けます」という投稿をしました。
公園内に置き去りにされていたテントの中にあったゴミを、テントの持ち主の住所を突き止めて実際に送り返すためには、地道な捜査を要したということです。

タイでは公園などにゴミをポイ捨てした場合、最高で禁錮5年と罰金1万6000ドルが課せられることになっています。
ゴミを送り返された人は、カオヤイ国立公園を泊まりがけで利用することはできなくなり、警察のブラックリストにも載せられます。

公園内の動物の深刻な健康被害

公園内には野生のゾウやトラをはじめ、絶滅の危機に瀕した動物なども数多く生息しています。
それらの動物が捨てられたゴミを間違って食べてしまうことにより、深刻な健康被害を被るケースがカオヤイ国立公園では何件も報告されています。
2019年8月にも、公園内で鹿が死んでいるのが発見され、解剖の結果、鹿の胃の中から3キロにも及ぶプラスチックが発見されました。
この事件を受けて、カオヤイ国立公園内でのプラスチック製品の使用が禁止となりました。

世界では、毎年数百万トンのプラスチックがポイ捨てされて蓄積していると言われています。
1980年からこれまでにプラスチックを摂取した野生生物の種類は魚類で932種、鳥類で291種、哺乳類で94種の報告がなされています。

日本でも、兵庫県立コウノトリの郷公園に生息する、国の特別天然記念物であるコウノトリがプラスチックを飲み込んで死亡したケースがありました。
プラスチックの袋や容器が自然に与えるダメージについて、私たちがもっと深く考察すれば、環境破壊にもストップがかかるはずです。